自宅を持たない高齢者の住宅確保
年金収入のみで賃貸住宅に住む場合は、家賃負担が大きな割合を占める。しかも、余生の30年の間には、老朽化による建て替え、配偶者の死亡に伴う年金の減額、入院、老人ホーム入所などの変化がありうる。年金額が少ない場合などは、早めに公的な高齢者向け住宅への応募などを検討する必要がある。
高齢者の金銭管理の工夫10項目
高齢者は、自宅に近い金融機関に生活用の口座を持つべき。通帳と印鑑は別々の金庫に保管する。物忘れが進むので、大型のデスクダイアリーで、スケジュール帳、日記、金銭出納帳、備忘録を兼ねたスーパー手帳を持つことがよい。
資産は遺族にもわかるように整理しておく
資産明細、金庫の鍵、銀行のパスワードなどを遺族にもわかるように整理しておけば、自分が忘れた場合、認知症になった場合、死亡した場合などに、家族(遺族)のためにも役に立つ。また、入院や老人ホーム入所の際は、連帯保証人が必要になる。留守中の支払や資産管理、遺体の引取先も任せることになる。日ごろから、特定の人を決めて、引継ぎを済ませておき、葬儀も含めて全面的に頼るしかない。
老後移住(1)田舎への移住は慎重に
「老後移住」という言葉が流行語のようになっている。しかし、そもそも、本当に老後移住をする必要があるのか。移住するとしても、どこに移住するかは、慎重に検討する必要がある。なにしろ、このあと、数年で健康寿命(男性72歳)を迎えるからだ。
今の自宅に、あと何年住めるのか
最近は90代の高齢者も珍しくないが、若い世代との同居は極めて減少している。自宅を持っている人でも、耐久性の面から、現在の自宅に、あと30年、100歳まで住み続けられるとは限らない。
高齢者は、自分の身の置き所として、自宅の売却、ケア付きマンション、老人施設への入所なども視野に、終の棲家を準備しておく必要がある。
年金生活になったら保険を見直そう
少額でも保険金を受け取れるのならば、無いよりは、あった方が良いに決まっている。しかし、無職で年金だけで生きていかねばならない者にとっては、払い込む保険料、受け取る保険金、年金生活の生計の維持・確保のバランスを考える必要がある。完全離職を境に一大決心をして、現在、加入している全部の保険を精査し、再検討しなければならない。60歳を過ぎてからも保険料を払う必要がある生命保険などは、加入の必要性自体を抜本的に再検討する必要がある。
投資の失敗は老後破産の主要原因の一つ
新NISAの影響などもあり、資産運用が盛んになっている。しかし、株式や投資信託、FXなどで、取り返しのつかない損失を出した人も多いと思う。「素人が、なけなしの退職金を注ぎ込んでの投資デビューは、老後破産に向かう道だ」と警鐘を鳴らす専門家もいる。「老後資金以外に、別枠で投資用の余裕資金」を持つ者でなければ、高齢者はリスクのある投資は避けるべきだ。
ローンやクレジットカードは整理
高齢になると物忘れや勘違いも増える。金銭の貸借や各種ローンは清算するべきだ。リボ払いやキャッシングの手数料は高い。銀行手数料にも注意し、利用条件を確認して節約する。クレジットカード、サブスクリプションは整理し、必要なものだけ残す。遺族への負担を避けるため、資産管理をしっかりし、家族に情報を伝える。
老後移住(2)高齢者こそ市街地に住むべきだ
張り切って老後移住しても、すぐに、健康寿命(男性72歳)だ。やがて、運転もできなくなり、通院や買い物も不自由になる。前後して、一方の配偶者が長期入院し、施設に入所し、亡くなる。高齢者のみの世帯の場合、暗い山の中の荒れ放題の中古住宅で一人暮らしになる。体力が落ち、100m歩くことさえ本当に大変になる。結局、市街地に戻らざるを得ないとすれば、老後資金を浪費して田舎に移住することに何の意味があるのか、移住前に慎重に考えた方がよさそうだ。老後移住先は、田舎ではなく、市街地だ。