終活・生前遺品整理を始める(2)
概要
遺品整理や生前整理の事業者は多いが、他人の目に触れる前に、まずは、次の5つの区分を意識して、生前に、一回は、自分自身で処分や引継を行ったらどうだろうか。
1 相続人に渡すべきもの
いかに健康に自信がある人でも、突然死ということもある。不動産の権利証(登記済証)、実印、通帳、公正証書遺言、印鑑証明のカード、現金等を入れた金庫の場所や鍵の所在などは、配偶者または跡継ぎとなるべき子供などに、生前から何らかの形で知らせておくことが良い。
たとえば、自分が死亡または認知症になったら、この封筒を皆で一緒に開封しろと言って泥棒に絶対に分からない場所に隠しておく。そこには、金庫の場所と鍵、公正証書遺言、資産や預金口座の一覧、保険の一覧、戸籍謄本などの各種請求先、年金の支給停止、各種名義変更、解約すべき保険などの手続き、葬式のやり方や連絡して欲しい人の一覧表など、事務的な連絡事項を封入するといった方法だ。終活ノートよりも実践的なファイルだ。
なお、「銀行の貸金庫」を契約した本人が死亡した場合には、分割協議書などで相続人全員の実印が揃わない限り、銀行は開けてくれなくなり、相続人は非常に困るようである。これは、「特定の相続人が、先に勝手に貸金庫の中身を持ち出すことを防ぐため」であるという。このトラブルを避けるためには、生きている内に、公正証書遺言に、特定の相続人に対して、貸金庫の内容物の取り出し・処分の権限を与えることが必要だ。
2 親族等に引き継ぐべきもの
先祖伝来の家宝ともいうべき古文書や家系図、書画・骨董、刀剣・甲冑、あるいは、戦前の希少な写真や歴史的資料などがある家では、特定の相続人に生前に引き渡し、相続の際に紛失・紛糾しないよう遺言書にも明記しておく。
相続人候補者全員が、どうしても引き取りたくないのであれば、散逸を防ぐため、自分の兄弟や叔父・叔母などの血族に贈呈するか、美術館や郷土資料館、市史編纂室等に寄贈する。
また、別荘、ゴルフ場会員権、高級時計や貴金属、楽器、和服、車両や船舶、書画・骨董・各種コレクションなど、高価だが家宝とは言えない程度で、必ずしも残さなくても良いものについても、売却するか特定の人に引き継いでしまうことである。
ただし、贈与税が発生しそうな場合、現在も使用中の場合などは、死ぬまでは自分の手元に置いておき、行き先だけを決めておいて、手元に置いても良い。その場合は、遺族がすっきり分配できるよう、あらかじめ「遺品の処分先一覧表」を皆に配布して、合意形成を図っておく方法もある。
その他の金融資産は、リスト化して遺言書などに記録して明らかにしておく。とりわけ、家のどこかに貴金属を隠してある場合、通帳のないネット銀行や電子マネーに入れた資産、各種保険、貸金庫などは存在自体が遺族にはわからない。区分と金額、ID、パスワードや引き出し方などをリスト化して引き継ぐ必要がある。
3 相続人が不要なら売るべきもの
上記以外の物で、パソコン、フィルム式高級カメラ、高級腕時計、宝石や金銀・プラチナ製品、高級電動工具、楽器、高級オーディオ、大量の金属、高級ブランド品など、「もともと、一定の価値のある物」は、相続人に贈呈する。
相続人が不要だという場合のみ、それぞれのルートで売却する。どこで売れば良いか分らない場合は、インターネットで検索すれば、いろいろ出てくる。売却を相続人に頼むという方法もある。
大きな駅周辺の大規模な質店でも、そういった商品の買い取りをしている。その他、ブランド品や和服などは、それぞれの買取会社があり、自宅での出張買取や持込もある。ピアノはメーカー名と型番がわかれば、電話だけで買い取りに来る。ブランド衣料、図書など、いろいろな品物の買取は、インターネットでも検索できる。
もちろん、売却するといっても、安く買いたたかれる。値がつかないものもあるが、迷っていては片付かない。安く売っても、世界の誰かに使ってもらえば本望だと思うしかない。廃棄費用と時間がかからないだけ、ありがたいと思うべきだろう。
4 その他、買い取り専門店で売るもの
それ以外の価値の低い物は、段ボール箱に詰めて、雑貨品のリサイクル買い取り専門店に持ち込むことで一気に解決する。
たとえば、コンパクトステレオ、コンパクトカメラなどの機器、LPレコード、安い電動工具、安い楽器やスポーツ用品等ならば、程度によるが、多少なら壊れていても、買い取ってもらえる。ただし、1点、100〜1,000円程度だと思った方が良い。「粗大ごみの処分費用がかからないだけ良い」と思う品物には適している。
また、パソコンや小型家電ならば、段ボールに詰めて宅配便で送れば、無料で引き取るという事業者もある。検索すれば、数多く出てくる。着払いなら良いが、無料引取ならば送料は取り戻せない。着払いの事業者を探す方法もある。
また、文庫本、漫画の単行本、ハードカバーなどの「市販の書籍」も本の買い取り専門店に持ち込むことで一気に解決する。おそらく、文庫本10円、ハードカバーは数百円以下、状態のよくない本はゼロ円の査定のものもある。しかし、処分費用がかからなくて済むし、他の人が活用できるなら良いかという気になる。なお、車が無い人や、高齢のために重いものが運べない人、大量に書籍がある人は、「書籍 宅配買取」、「書籍 訪問買取」で検索して利用することが便利だ。電話をすれば、自宅まで宅配便業者が引き取りに来てくれる業者もある。
「宅配買取」といった語句で検索すれば、数多くの業者が出ているが、一箱で10円とか、逆に、処理料を要求されたりということがあるらしい。「宅配買取 危険」や、「〇〇〇(業者名) 危険」という語句で検索すれば、いろいろ出てくる。「信頼できる事業者」に依頼する必要がある。国民生活センターのホームページでは、宅配買い取りサービスは、トラブルが増加しているとして警鐘を鳴らしている。
同様に、住宅地を軽トラで走る廃品収集業者も、注意が必要な場合もある。実際に声をかけたことがあるが、壊れていない自転車でも「これは処理費用が5千円かかる」といって処理費用を請求してきた業者もいた。もちろん、断ったが、各市区町村で、粗大ごみの持ち込みや回収を数百円程度でしているはずなので、そちらに申し込んだ方が良い。
その他、雑貨類は、近隣の不用品を買い取る店に持ち込むことが良いと思う。図書専門、雑貨専門、おもちゃ専門、洋服専門、何でも大丈夫な店など、いろいろある。近隣にあれば、店舗を構える業者の方が安心な気もする。
なお、昔の家族写真や家族ビデオなどを処分する場合は、正副のDVDやブルーレイに電子化した上で捨てることが望ましい。併せて、グーグルフォトのアルバムなどの形で、家族全員が電子的に共有しておけば、死んだ後も困らない。なお、この際、気に入った写真だけを厳選して編纂し、保存版として、アルバムとして残す、データ化しておくという方法もある。
5 廃棄するもの
以上のプロセスで、貰い手や買い手のなかったもののほか、粗大ゴミ、燃えるゴミ、資源ゴミなどの捨てるしかないものは、市区町村ごとのルールで引き取ってもらえる。古い衣類などは資源ごみでリサイクルにまわせる。粗大ゴミなどは有料で回収してくれる。古いが未使用の結婚式の引き出物などは、相続人に頼んで福祉バザー等に出してもよい。
終活・生前遺品整理を始める(1)
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