高齢者は万全の防犯対策を
概要
振り込め詐欺などの特殊詐欺、屋根や床下等の点検商法などが広がっている。高齢者の心理的弱みを利用した様々な手口がある。即座に反応せず、第3者に相談するなど、冷静に対応することが重要。
また、高齢者のみの世帯などを狙う強盗や窃盗も多い。防犯対策として、「録音や警告などの迷惑電話防止機能付きの電話機」、「人感センサー付きの防犯カメラ」、「センサーライトの設置」、「警備会社のセキュリティシステム」の導入などが有効だ。
犯人は、高齢者の弱点を突いてくる
いわゆる振り込め詐欺、オレオレ詐欺などの特殊詐欺が後を絶たない。おそらく、とっさの的確な判断が難しい高齢者が標的になっている。警察庁の発表によると、令和4年の特殊詐欺の認知件数は前年比2割増加、被害額は3割増加で370.8億円であり、その被害は大都市圏に集中しているという。その他にも、屋根や床下などの点検商法などの悪質商法、高齢者のみの世帯を狙う窃盗や強盗殺人さえもある。高齢者は、「まさか、自分は大丈夫」と思わず、元気なうちに万全の対策を講じておくことだ。
誰でも、高齢になると危なっかしい状態に陥る。実際に周囲の先輩たちを冷静に観察してほしい。なぜか、高齢になると、日常生活全般に関して短気になる、妙にあせる、何事も待てない。物忘れや勘違いが増える。頑固で強情になって、思い込みが激しくなる、必死に言い張る。しかし、本人は、それに気づいていない。思い込んだら命がけという感じになる。どこか、駄菓子屋の前で頑張る幼児の頃の姿に戻っている。失礼ながら、おそらく、この老化こそが特殊詐欺を成立させる要因になっているのではないか。
親族などを名乗る「振り込め詐欺」、有料サイトを利用したといった名目などの「架空請求詐欺」、キャッシュカード等を盗み取る「詐欺盗」などの犯人は、そういう高齢者の特性を熟知している。犯罪者は、高齢者の認知機能の低下、心理的な弱みにつけこんだ話法や手口で不安や危機感をあおり、焦らせて莫大な金額の詐欺を成立させているのではないかと思う。誰もが、「だまされる人も、どうかしている」、「まさか、自分は詐欺には引っかからない」と思っているはずだが、実際には、そういう人も被害者になっている。
お金の話で「すぐに」、「急に」は詐欺だ
およそ、日本で普通に生活している中で、葬式でも、手術でも、示談でも、救急車でさえ、「ある日、その日に急に大金を払わなければならない」などということは無い。逆に、何か失敗してしまった場合に、「その日のうちに急に大金を渡しさえすれば、無かったことにする、示談に応じる、円満に解決する」などということも無いはずである。要するに、「すぐに、急には詐欺だ」、「お金の話が出たら詐欺だ」と思った方が良い。
ところが、犯人もノウハウを蓄積しており、巧妙らしい。電話や訪問者から金銭、銀行カード等の話が出たら、とりあえず、「何もしない、動かない」と決めておくことである。何があっても、あせることはないのだ。間に合わないことは無い。「裁判所からの最終通告です」、「あなたの情報が不正利用されています」、「あなたの会員番号が利用停止されました」といった焦らせるための脅迫の様なハガキや、通販会社やクレジット会社を名乗り、個人情報やパスワード等の再入力を求めるメールが来ても、絶対に入力してはいけない。
また、当方から先方に応答・連絡してはいけない。相手の思う壺だ。裁判所や企業から、突然、そのような内容が電子メールで送信されたり、普通葉書で送付されたりすることは無いからである。先方はランダムに発信しているだけだから、応答した人だけがカモになってしまう。先方に問い合わせなどをすれば、電話番号やメールアドレスなどが登録されてしまう。こういった場合は、絶対に無視しなければならない。
おろおろして、あわてて何らかの対応(応答・照会・支払等)を一切しないで、信用できる親族に当方から直接に連絡することである。何事も、それからでも、十分に間に合う。あやしい話、うまい話、急な話には乗らないことである。困ったら110番で警察署に通報すること、相談することが優先である。あるいは、局番なしの188に電話することで、「国民生活センター」の消費者ホットライン(全国統一番号)につながる。
いろいろな手口の詐欺がある
最近は、必ずしも、電話口で「オレオレ」と言うわけではなく、書類を使った詐欺、感じの良い若い女性が家を訪問する詐欺など、無数の手口があるらしい。 「パソコンやATMを使った還付金詐欺」、「税務署や市役所、警察官や息子の上司を名乗る詐欺」、「裁判所を名乗って、すぐに連絡しないと罪が確定するぞと郵便で脅す詐欺」、「スマホなどの会員番号の確認などといった偽メールでクレジット情報などを入力させる詐欺」などもある。
その他、「頼んでいない商品を無断で宅配便で送りつけて請求する詐欺」、「圧迫商法によるワンルームマンションの脅迫のような高圧的なセールス」、「無料の床下や屋根の点検などといって、勝手な工事をして法外な料金を取る詐欺」などの例もある。今や詐欺の手口や手段が多様化しており、どんどん新しい手口が出ているため、確実な予防策はない。2018年には、一部上場企業でさえ、架空の土地売買で数十億円もの詐欺にあった事件も報道された。
特に、高齢者のみの世帯などは、詐欺はもちろん、空き巣、強盗、居座り型の押し売り等を含め、万全の注意が必要である。なお、悪質商法や家庭内暴力などについては、
「安全や平穏に関する警察相談専用電話 #9110 」に電話すれば良い。
全国どこからでも、17時までは、発信地を管轄する都道府県警察本部の警察総合相談窓口にダイレクトにつながる。「緊急ではない警察への相談、照会、要望、案内など」の窓口だ。
高齢者の具体的な防犯対策
筆者を含め、これを読んでいる何人かは、残念ながら、近い将来、詐欺や窃盗にあうと思った方が良い。そこで、防犯対策としては、たとえば、
◯ 録音や警告など、迷惑電話防止機能付きの電話機に変更する
◯ 常時、留守電にしておき、必要な電話だけ返信する
◯ 屋外に人感センサー付きのライトをつける
◯ 歩くと音の出る砂利を家の外周にまく
◯ 自動録画機能付きのインターホンや防犯カメラを設置する
といった対策だけでも、犯罪者にとっては脅威になる。経済的に余裕があれば、警備会社のホームセキュリティを契約することが望ましい。あの目立つステッカーを何枚も貼ることで、お守りになる。案外、安い。
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