年金生活になったら保険を見直そう
概要
完全に退職した時点でも、多くの人は、生命保険、損害保険、医療保険など、さまざまな保険に加入しているのではないかと思う。年間の保険料も相当の金額になっているはずだ。これから、「余生という名の無職の30年間」を迎え、ほぼ、年金収入だけの長い生活に入る。この際、すべての保険について、個々に必要性や金額等を見直したらどうか。
全部の保険を見直す好機
万が一の時、保険金を受け取れるのならば、無いよりは、あった方が良いに決まっている。そう考えて、生命保険会社や損害保険会社などが取り扱う各種の保険に加入してきたはずだが、ひとたび加入してしまうと、つい、面倒で放置したままになりがちである。
しかし、「余生という名の無職の30年間」を迎え、ほぼ、年金収入だけの長い生活に入る。完全な無職になったら、保険料を払い込むのも厳しくなる。これを機会に一大決心をして、生命保険、医療保険、自動車保険や火災保険、損害賠償責任保険等の種類や金額など、現時点で加入している全部の保険を総合的に精査し、再検討したらどうか。
今後、寿命によっては、10~30年もの期間、無職で年金だけで生きていかねばならない者にとっては、払い込む保険料と、受け取る保険金、生活費のバランスを考えて、保険全部を見直す必要がある。
ただし、保険という商品には専門性があり、しかも、膨大な種類と特徴と会社があるので、全部の保険を精査する、再検討するといっても、なかなか難しい。そこで、最近は、保険会社や保険代理店が運営するような無料の保険の見直し相談窓口などが、いろいろある。
見直しの結果、何らかの形で「支払いが発生する保険への加入」や「集約」、「切り替え」を勧められるだろうと想像する。そういう可能性はあるものの、やはり、全体としては、専門家として、年金生活の高齢者にふさわしい形で、総合的で有効な見直しのアドバイスをしてもらえるかもしれない。
とりあえず、次の観点から、自分が加入している保険を区分し、整理する方向で検討してみてはどうか。
収入に見合った生活に転換を
収入が半減したのなら、本来は支出も半減しなければならない。「余生という名の無職の30年間」においては、終末期に向けた人生設計・生活設計の見直しが不可欠。「意識的…
年齢に関係なく継続する保険
ひとたび何か事故があれば、大金が必要になり、生活が立ちゆかなくなってしまう分野の保険は、年齢に関係なく、基本的には継続する必要がある。たとえば、「自家用車保険(任意保険)」、「火災保険・地震保険」、「自転車保険や個人賠償責任保険(個人賠償責任補償特約)」などの損害保険である。
なお、「医療保険」は、持病や健康状態により、加入できる保険と加入できない保険がある。高齢者にとっては掛け金が割高な上に、入院や手術の際の給付は比較的に少額である。比較してみればわかるが、定期的に、あるいは、いざというときに数万円~数十万円の一時金がもらえるという保険は、概ね掛け金が高く、必ずしも「お得」かどうかはわからない。
少額の入院見舞金などに目を奪われず、「先進医療特約」、「がん特約」、「婦人科特約」などに特化した入り方をすると、60代でも、毎月、低価格で加入できる医療保険がある。
なお、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人が癌に罹患する時代である。特に、親や兄弟に癌患者がいる人は、掛け金が安い年齢の時期に「がん保険」への加入を検討することが良いかもしれない。
無職・無収入になったら解約する保険
前項以外の保険で、特に、無職・無収入なってからも保険料を払う必要がある保険などは、加入の必要性自体を抜本的に再検討する必要がある。
たとえば、「自分の生命保険」、「就業不能保険」、「所得保障保険」、「自分の子ども名義の生命保険」、「各種積み立て」、「互助会的な掛金」などは、基本的には解約してはどうだろうか。仮に、当面は継続するとした場合でも、完全な年金生活に入るまでの間には見直す必要がある。
なぜなら、年金収入だけでは自分の生活費もおぼつかない時に、毎月の保険料は非常に重い負担である。また、当然だが、高齢者にとって生命保険料等は不利に設計されており、年齢に応じて給付額も極端に少なく、割に合わない。
さらに、現役の時のように、自分の給料に依存している扶養親族がいないのであれば、生命保険は不要である。自分が寝たきりになっても年金は出る。
また、自分が先に死んだ場合でも、妻には遺族年金などの制度があるのだ。
個別に判断すべき保険
上記の区分にかかわらず、以下のような場合は、総合的に判断する必要がある。
(1)就職していない子供など、扶養親族がいる
(2)自分または配偶者が危険な職務に従事している
(3)若いころに加入した有利な条件の生命保険
(4)払い込みが終了している終身保険
(5)満期返戻金があるが、その期日が近い保険
など、家族の状況や個々の事情に応じて検討することが必要である。
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