健康維持は家族のためでもある
概要
高齢者は、心身の健康を維持し、健康寿命を延ばすことが最も重要な仕事だ。健康は自分自身のためだけではない。同居の家族はもちろん、別居の子供たちを含めて、近親者の心身の負担や時間的な負担を減らす事ができるし、経済的にもメリットがある。そのためには、定期的に、人間ドック、歯科検診を受け、タバコ、酒、過食をやめることが重要だ。
健康は自分自身のためだけではない
動植物は老化する。それは当然であり、やむを得ないが、認知症や寝たきりではなく、できれば、死ぬ直前まで、食事やトイレ、入浴、着替えなど「自分で、自分の身の回りのことができる程度」には健康でいたいものだ。
そのためには、高齢者は、心身の健康を維持し、健康寿命を延ばすことが最も重要な仕事だ。心身が健康でなければ、大好物を食べても、どんな景勝を見ても、誰と会っても、いかに巨額の資産を持っていても楽しくないと思う。そうすると、毎日が楽しくないということになり、余生の過ごし方としては、最も残念なパターンの一つになってしまう。
もちろん、健康は自分自身のためだけではない。同居の家族はもちろん、別居の子供たちを含めて、近親者の心身の負担や時間的な負担を減らす事ができるし、経済的にもメリットがある。
とりわけ、高齢者のみの世帯においては、健康維持は重大な課題だ。たくさんの子どもや孫がいる人でも、定年退職後は、結局、再び高齢者夫婦だけの生活に戻る場合が多い。実態として、多世代同居が激減している。65歳以上の者のいる世帯は、1980年(昭和55年)では3世代世帯の割合が全体の半数を占めていたが、2021年(令和3年)では「夫婦のみの世帯」及び「単独世帯」がそれぞれ約3割を占めている。(令和5年版高齢社会白書)
こうした状況の中で、高齢者が余生を充実させるためには、できる限り、長い期間を夫婦そろって、心身ともに健康で仲良く暮らすことが理想であろう。健康が維持できず、一方の配偶者が長期入院したり、早逝するといったことになれば、それだけ、独居老人(一人暮らしの高齢者)として暮らす年数が長くなる。
また、単身の高齢者の場合は、どうしても、独居老人となる期間が長くなりがちであることに加え、孤独死の懸念もある。何歳になっても、さまざまな各種手続きも自分一人で処理する必要がある。認知症を含め、より一層、健康に留意し、心身を健康に保たなければ始まらない。
定期的な検診と生活習慣の改善
「健康寿命を延ばして、生きている間は楽しく暮らすため」には、バランスのとれた食事、適度な運動と睡眠、心の健康など、毎日の生活習慣が大事なことは周知のとおりだ。併せて、早期発見、早期治療が大事だ。現役の時には、会社から強制的に健康診断を受けさせられていた人でも、定年退職後は定期健診から遠ざかってしまう可能性がある。毎年、同じ時期に、夫婦で人間ドックを受診し、もちろん、女性の場合は婦人科検診も受けることを義務と考えるべきだ。
また、特に、高齢者にとっては、目と歯の健康が極めて大事だが、歯の健診は人間ドックに含まれない場合が多いと思われるので、自分で定期的な歯科検診を受けることが不可欠だ。自分の歯を残すためには、定期的に、歯と歯茎の点検と清掃を受けて、早期発見と治療に努めることが欠かせない。
このような健診を受けるには手間も費用も必要だが、車検だ、国民の義務だと思って、決めた時期と場所で定期的に受診しなければならない。早期発見・早期治療ができれば、安い費用で短期間のうちに直せる病気も多い。
一般論として、早期に病気を発見できれば、その分、医療費も軽減できるだろうし、完全に回復できる可能性も高まるのではないかと思う。そして、その後も何らかの形で働くことさえ可能になるかもしれない。採算的にも、人間ドック代などはすぐに回収できるのではないか。
生涯現役 高齢でも働くことができる時代だ
マクドナルドで、95歳の男性が週に4回も勤務をしているという報道があった。介護や健康などの問題がなければ、何歳になったとしても、何らかの形で、週2~3回でも外…
タバコ・酒・過食との決別は一石二鳥だ
完全に無職になり、年金だけで生活せざるを得ない状態になった場合は、引き続き、喫煙を継続するかどうかを考える良い機会だ。たとえば、毎日、1箱550円のタバコを吸う人は、年間 200,750円になる。1年に20枚の1万円札に火をつけて燃やし、その煙を吸っていることになる。
これが、毎年、続くのだから、年金生活者にとっては、タバコは高価で不健康な贅沢品なのである。もちろん、経済的な面だけでなく、健康の面からも、高齢者の失火予防の面からも、周囲への副流煙の加害の面からも、タバコは「百害あって一利なし」だ。何の得にもならない毒物であり、周囲の人の健康にも大迷惑だ。電子タバコを含めて、今すぐに完全に禁煙することが望ましい。
酒・過食も同様であり、贅沢かつ不健康な習慣だ。特に、居酒屋、スナック、レストランなど、飲食店での浪費に直結する可能性が高い上に、贅沢な行動習慣が形成されやすい。夕方になると落ち着かない人もいる。自宅で酒・過食を行う場合には多少は経済的だが、不健康な行動であることは変わらない。
人生観にもよるが、「この年齢になって、今さらタバコも酒も過食もやめろと言われても無理だ」、「楽しみが無いなら生きていても仕方がない」というという反発もあるだろう。しかし、このような発想とダダのこね方は、実に幼児レベルだ。
何しろ、これからは、「余生という名の無職の30年間」に立ち向かわなければならない。現役時代に比べて、生活を縮小せざるを得ない中で、何を捨て、何を選択するかだろう。タバコ・酒・過食との決別は、節約と健康の一石二鳥でもある。むしろ、高齢者だからこそ取り組むべき課題だ。
必ず禁煙できる唯一の方法
禁煙に失敗している人は多い。これは、裏を返せば、「誰でも禁煙できる確実な方法が無いこと」の証でもある。しかし、およそ、禁煙というものは単純であり、ただ、タバコ…
健康法は、いろいろあるが・・・
健康法については、古くから、さまざまな場所で、さまざまな情報が発信されていることに加え、誰でも、それぞれの経験、体質、考え方があると思う。そういう意味では、筆者が健康法を述べる資格はないが、自分自身では、できる限り、次の事項を心がけたいと考えている。
(1)質量ともにバランスの良い栄養摂取
ある程度、決まった時刻に食事をとる
和食中心で、野菜を多めにし、揚げ物は控えめに
食事は腹八分目にして、暴飲暴食に注意
糖分、間食、炭水化物は控えめに
(2)タバコ・酒との決別
禁煙、禁酒を徹底し、その費用を好きなことに使う
(3)適度の運動
適度に歩き、外の空気を吸う
ラジオ体操のような軽い体操を習慣にする
(4)良い睡眠
決まった時刻に寝ることとし、夜更かしはしない
昼寝しすぎない
満腹や酔った状態で眠らない
(5)明るい気持ちで生活する
あれこれ、クヨクヨ考えない
怒らない、疑わない、妬まない
(6)定期健診
毎年、決まった時期に人間ドックを受ける
4か月ごとに歯と歯肉の検診、清掃を受ける
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