高齢者として必要な準備はしておく 

 

概要

 高齢者になったら、いつ、

何があるかわからない。「元気な時に遺影を撮影しておく」、「生前に遺品を整理する」、「もう、ペットは飼わない」など、生前に準備できるものは準備しておくことが、自分のためにも、周囲の人のためにも必要ではないか。なお、一人暮らしの高齢者は、孤独死に備え、「毎日の定時連絡」、「万が一の時の緊急連絡」の体制を作っておくことが必要だ。

明朝、目が覚めなかった時にどうするか

一人暮らしの高齢者が準備すべきこと 孤独死の対策 

 いわゆる突然死は、知人にも何人かいる。「心不全のために翌朝起きてこなかった」、「風呂で死んでいた」などの事例は、高齢者でなくても意外に多い。今夜、眠ったまま、明日の朝、目が覚めなかった時にどうするかといえば、どうしようもない。特に、一人暮らしの高齢者が「突然死」した場合などは、「孤独死」となる可能性が高いと思われる。

 一般社団法人日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会のレポートでは、「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った一人暮らしの人」 を「孤独死」と定義している。孤独死の4割は3日以内に発見されるが、3割は半月以上も発見されないという。さらに、90日以上も発見されない人が3%近くいるとのことだ。異臭や虫が出てきて気が付くという。

 孤独死の3人に1人は、半月以上も発見されていないことになる。特に、高齢者の一人暮らしの場合は、毎日の学校や職場があるわけではないので、長期間、異変を発見してもらえない可能性が高いのではないか。

 前述のレポートでも、「他の人と関わる頻度が多いため、女性の方が発見までの時間が早い」と指摘していることは注目すべき観点だ。男性は、老人ホームの中でも孤立する傾向があるが、一人暮らしの男性高齢者は、日ごろから、他の人との関わる頻度を特に意識しておく必要がある

 「突然死」の場合はもちろんだが、「転倒等で、突然、家の中で動けなくなくなった」、「即日入院した」、「救急搬送された」といった場合も同じだ。旅行と違って、事前に準備できない。日ごろから、「近所の人」、「信頼できる人」などに頼んでおくべき事項はたくさんある。

 高齢者は、遅かれ早かれ、子供たちとも別れ、一方の配偶者も亡くなって、やがて、一人暮らしになってしまう可能性が十分にありうる。高齢者単身世帯は増加しているが、自分が一人暮らしの高齢者になった場合は、突然死や緊急入院等に備え、下記の準備をしておいたらどうか。 

遠くの親類より近くの他人 ~定時連絡、緊急連絡

 心不全や転倒で動けなくなった場合など、一人暮らしの高齢者の体調が急に悪くなった場合には、本人から助けを求めることができない場合も想定される。すでに、一部の市町村では、一人暮らしの高齢者を対象に、安否確認のための人感センサーを住宅内に無料で設置して、毎日、自動チェックし、反応がないときは、受信センターから電話で安否確認を行っている。また、各種企業では、トイレのドア、ポットなどにセンサーを付けて、一定時間、反応がない場合は一定の人に連絡をしてくれるという有料サービスを導入している。

 そういったシステムを導入している場合でも、結局は、何かあれば、近隣の人や緊急連絡先に安否確認の依頼が届き、最終的には、誰かが現地確認をすることになる。内容的には、下記のアナログ的な仕組みと同様であり、近隣との日ごろの接触が重要であることに変わりはない。安否確認システムを導入していない市町村に居住している一人暮らしの高齢者は、もちろんのこと、皆が下記のような方式で万が一の体制を構築しておくことが大事だ。

【具体策1】定時連絡体制
  一人暮らしの高齢者は、毎日、定時に自分から誰かと連絡をとるという安否確認体制を作っておくべきだ(定時連絡体制)。ラインやショートメールでもよいし、電話でも良い。重要な事は、連絡がとれない場合の緊急対応を取り決めておくことだ。一定の時間までに連絡が無い場合は、「今日は、連絡を忘れたのかな」と思いつつも、倒れているかもしれないと考えて、「どうしたの」と、先方から連絡してもらう。それでも、「応答しなかったら駆けつける」、自分が遠隔地の場合は「近所の特定の人に様子を見てもらうよう連絡をする」、「緊急連絡体制を活用する」といった対応ルールを構築して共有化しておくことが大事だ。
 なお、高齢者は、「家の中で転んだら、一人では起き上がれなくなって動けない」ということが本当にある。連絡が取れなかった場合も、急死だけではなく、転倒や骨折などの理由で家の中で立ち往生して動けなくなっている可能性もある。

【具体策2】緊急連絡体制
 昼になっても雨戸が開かない、新聞が取ってない、夜になっても電気がつかない、呼びかけても電話をしても応答がない、洗濯物が干したままだなど、「いつもと違う。何か変だ。」ということは近所の人でなければ気づかない。もし、こういった異変に気付いたら、「家の鍵を預かっている人、親族など、特定の連絡先への連絡をしてもらうこと」を連絡体制に入れ込み、近所の複数の人に頼んでおく緊急連絡体制)。複数系統で緊急連絡網を事前に構築しておくことが必要だ。定期配達の弁当会社でも、受取人に異変があれば事前登録先に連絡してくれる会社もある。

【具体策3】家の鍵を預ける
 以上の結果、明らかに異常だと思われる場合には、実際の対応や確認のために、誰かに立ち入ってもらうことが必要になる。親族の連絡先が遠方ならば、緊急時には近隣の人に立ち入ってもらうと助かるかもしれない。遠くの親類より近くの他人だ。その場合は、まず、警察に通報して立ち会ってもらったうえで入室するとスムーズに現場検証、検視に移ることができる。
 そのためには、家の鍵を預かってくれるような近所の人が必要だ。ふつう、なかなか、そんな奇特な人はいない。日ごろの近隣との円満な人間関係が重要だ。大家さん、子どもや親戚が近隣に住んでいればよいが、場合によっては、近隣の一人暮らしの高齢者同士で安否確認体制・緊急連絡体制を作っておいてもよいかもしれない。

【具体策4】警備会社に申し込
 経済的に余裕があれば、以上の方法に加えて、各警備会社が用意している高齢者のみまもりサービスを申し込んでおく方法もある。窃盗・強盗などの通常の防犯・警備とセットにしたコースもある。警備会社では家の鍵を1本預かるので、非常時には立ち入りもしてくれる。 


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身の回りをシンプルにしておく

 また、高齢者のみの世帯は、急病、窃盗、強盗など、何があるかわからない。非常通報ができるよう、居間や寝床には、手の届く場所に電話や非常ブザーなどを置いておく必要がある。

 もちろん、こうした工夫にも限界があるので、加齢が進み、体調が思わしくなく、身の回りのことを一人でこなすことが大変になってきた場合は、介護保険によるヘルパーの依頼や老人ホームへの入居を検討する必要がある。 

遺影は故人の唯一のイメージ

 縁起の悪い話が続いて恐縮だが、元気なうちにこそ、「遺影」の準備をしておく必要がある。葬儀や法事では必ず遺影を掲げる。死を迎えるにあたっては、やはり、画質の良い、印象の良い遺影が必要である。

故人のイメージは、遺影の1枚で決まる

 どれほど多くのスナップ写真を残しても、やはり、故人のイメージは、最後の遺影の1枚で大きく左右される。この遺影が素人写真では、あまりに残念である。やはり、プロは違う。

 気に入った1枚を葬式用の遺影として、拡大して額に入れてもらい、子供など、葬儀を頼む人に渡しておく。この用意がしてあれば、死亡直後のバタバタの中では、非常にありがたい。葬式当日だけでなく、死後も残る「唯一の故人の遺影」となる。

 この遺影は、当然、葬儀でも法事でも使用する。義理の関係の親戚や会葬者など、故人をあまり知らない者にとっては、この写真が唯一の故人のイメージになる。

元気な時に撮影することに意味がある

 病を得てからの写真では、どうしても、「生気のない顔」、「頬のこけた寂しい病人の顔」になってしまう。それに、余命宣告されたり、いよいよ死期が迫ってから、「葬儀の写真を撮りに行こう」などとは、いくらなんでも言えない。そういう病状になってしまえば、おそらく自由に外出もできない。また、元気な時に突然死という可能性もある。

 そうしたことから総合すれば、元気な時にこそ、さっぱりした服装と髪型にして、写真屋で鮮明な遺影を撮影しておくことに意味がある。濃色の服装の方が、斎場などで遠くから遺影を見たときに相対的に顔が映えるように思う。

 この遺影は、遺影が若すぎないよう、数年ごとに撮り直すことが望ましい。もらえる場合は、写真のデータをもらっておくことだ。少なくとも、私の両親の場合は、二人そろって遺影を撮影に行き、それぞれ、大きな額に入れて用意してあった。その時は大げさだと笑ったが、結局、非常にありがたかった。

 葬儀の写真選びは悩むと思うが、「生前に、本人が見て、自分の遺影として気に入った写真」だったので、あれこれ取捨選択の心配がなく使用できたという点で助かった。母の葬儀の終了後、亡母の妹からは、「きれいな写真を使ってくれて、ありがとう」とお礼を言われた。「女性は何歳になっても、そういう見方をするのだな」と改めて思った。なおのこと、遺影の重要性を感じた。

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